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Department of Environmental Medicine and Molecular Toxicology,
Tohoku University Graduate School of Medicine

研究内容Research Project

研究プロジェクト名及び概要


Ⅰ. 一酸化窒素(NO)・活性酸素のシグナル伝達機能
Ⅱ.インフルエンザウイルス肺炎の分子病態論
Ⅲ.慢性感染・炎症と発がんとの関わりについての研究
Ⅳ.ヘリコバクターにおる新興感染症の分子疫学・病態解明


Ⅱ.インフルエンザウイルス肺炎の分子病態論

私たちは、インフルエンザウイルス感染病態における NO と ROS の役割について、永年解析を行ってきました。ヒトにおけるインフルエンザウイルスの感染は、通常は上気道粘膜にとどまり、肺炎に至ることはまれですが、マウスに馴化させたヒト由来のウイルス株をマウスに吸入感染させると、感染は下気道までおよび、劇症肺炎を呈します。その病理組織像は、急性期には、広範な肺胞・気道上皮傷害と炎症細胞浸潤、および肺水腫を呈し、その後は線維増殖性変化を来たすことから、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の動物モデルとして研究に用いることができます。

このインフルエンザウイルス肺炎モデルの解析を通じて、1)感染に伴って NO と ROS が、それぞれ誘導型 NO 合成酵素(iNOS)とキサンチンオキシターゼの誘導を介して過剰に産生されること、2)過剰に産生された NO と ROS は、抗ウイルス作用を発揮することなく、3)むしろ宿主の細胞や肺組織を傷害し、肺炎病態を悪化させること、4)NO や ROS の産生を阻害すると病態が改善すること、さらに、5)NO や ROS はウイルスの遺伝子変異を促進すること、などを明らかにしました。

しかしながら最近、NO と ROS には、このような生体損傷因子としての側面のみでなく、上述したように酸化ストレス応答シグナルとして生体防御機能を発揮することが分かってきました。実際、ウイルス感染肺において、iNOS 誘導に伴う 8−ニトロ cGMP の生成とタンパク質 S−グアニル化がおこっていること、その結果、酸化ストレス応答タンパク質であるヘムオキシゲナーゼ−1が誘導されることを明らかにしました。現在、8−ニトロ cGMPをシグナル分子とする酸化ストレス応答の分子メカニズムと、肺炎・ARDS 病態における意義について研究を展開しています。

最近、高病原性鳥インフルエンザウイルスのヒト感染に伴う致死的 ARDS が世界的な問題となっています。その病態解明と新規治療法の開発は急務であり、本モデルは当該研究においても有用であると思われます。

文 献

1. Yoshitake J, Akaike T, Akuta T, Tamura F, Ogura T, Esumi H, and Maeda H.
Nitric oxide as an endogenous mutagen for Sendai virus without antiviral activity.
J Virol 78: 8709-8719 (2004).

2. Akaike T, Okamoto S, Sawa T, Yoshitake J, Tamura F, Ichimori K, Miyazaki K, Sasamoto K, and Maeda H.
8-Nitroguanosine formation in viral pneumonia and its implication for pathogenesis.
Proc Natl Acad Sci USA 100: 685-690 (2003).

3. Akaike T, Noguchi Y, Ijiri S, Setoguchi K, Suga M, Zheng YM, Dietzschold B, and Maeda H.
Pathogenesis of influenza virus-induced pneumonia: involvement of both nitric oxide and oxygen radicals.
Proc Natl Acad Sci USA 93: 2448-2453 (1996).

4. Akaike T, Ando M, Oda T, Doi T, Ijiri S, Araki S, and Maeda H.
Dependence on O2¯ generation by xanthine oxidase of pathogenesis of influenza virus infection in mice.
J Clin Invest 85: 739-745 (1990).

5. Oda T, Akaike T, Hamamoto T, Suzuki F, Hirano T, and Maeda H.
Oxygen radicals in influenza-induced pathogenesis and treatment with pyran polymer-conjugated SOD.
Science 244: 974-976 (1989).


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